高低差QCの数値が大きいとき、 まず疑うべきは「評価対象を混ぜすぎていないか」です。
エリア指定とグリッド指定の違いで、平均差や最大差の見え方がどう変わるかを整理します。
はじめに
前回の入口確認で「重複はOK、軌跡も大崩れしてない」
ここまで来たら、いよいよ高さ差QC。
で、最初に出た数字がこれ。
- Average dz = 0.123m(12cm)
- RMS = 0.176m
……正直、ここで一瞬止まりました。
でも、断面を見ると「そんなにズレて見えない」。
このギャップが今回の核心です。
まず仕様を知る
高さ差QCは、点を1対1で比べるというより
グリッド(格子)単位で統計を取る方式が多いです。
さらに Cut off(外れ値閾値)がある。
Cut offを超える差は無視される=設定で数字が動く。

図3:高さ差QCの設定概念(Grid / Cut off / From Class)
比較はグリッド単位。Cut offを超える差は無視されるため、外れ値・境界混入の影響が統計に強く出る。今回は地表クラス(Class2)で評価。
1) 初期(全域)で12cmが出た:これはよくある
全域でやると、混ざります。
- 斜面
- 路肩や縁石などの境界
- 欠損
- 点密度ムラ
- 外れ点
つまり、地形も条件も“ごちゃ混ぜ”。
そりゃ統計は盛られる。

図4:初期(全域)の高さ差QC(Grid=2m、Cut off=0.5m、地表)
Average dz=0.123m、RMS=0.176m。全域評価は起伏や境界影響が混ざりやすく、初期値が大きく出て“ズレが大きい”と誤解しやすい。
2) ここで作戦変更:「平坦ROIだけ」で勝負する
この瞬間、気持ちが楽になりました。
“比較しやすい地形だけ”で代表値を出せばいい。
道路、造成地、駐車場。
平坦で形状が単純な場所は、QCの誤解が減ります。

図5:平坦な道路ROIに限定した高さ差QC(地表)
評価範囲を平坦部に絞ることで、起伏・境界の影響を抑え、代表精度に近い値を取りにいく。
3) Gridを細かくする:セル混合を減らして“素直な評価”へ
グリッドが大きいと、1セル内に「路面+路肩」が入る。
それだけで統計は荒れます。
だからGridを細かくして傾向を見る。

図6:Grid=1mでの高さ差QC(地表)
Gridを細かくするとセル混合の影響が減る一方、評価対象面積(Overlap Area)が変わる点に注意。目的は「代表値として妥当な条件」を見極めること。
4) Cut off 0.2m:ここで一気に腹落ちした
今回の決定打はこれ。
Cut offを 0.5 → 0.2に変更。
すると、統計がスッと落ちて、断面の見た目とも一致してきました。
- Std Dev = 0.042m
- RMS = 0.057m
- Average dz = 0.039m

図7:Cut off=0.2mでの高さ差QC(代表値の収束)
Std Dev=0.042m、RMS=0.057m、Average dz=0.039m。外れ値影響が抑えられ、平均約4cm/RMS約6cmに収束。初期の“12cm”は「一部セルの大差」に引っ張られていた可能性が高い。
体感メモ:
ここで「12cmズレてる」じゃなくて
「外れが混ざって盛られてた」が腑に落ちました。
5) 補正処理(TA)を回しても数mm:今回はズレの種類が違った
補正処理(TA)を入れて前後比較してみると、改善は数mmでした。
※TA=Trajectory Adjustment(軌道調整)
- 平均:0.066m → 0.062m
- RMS:0.116m → 0.111m
これ、逆に言うと
「全体が剛体ズレでズレてるならもっと効くはず」
という示唆にもなります。

図8:TA前後比較(同一ROI・同一設定)
TA前:Average dz=0.066m、RMS=0.116m → TA後:Average dz=0.062m、RMS=0.111m。改善が小さい場合、主因は剛体ズレではなく局所要因(外れ/境界/密度)寄りの可能性。
6) 断面(直交+Z誇張)で最後の安心材料を取る
最後は断面。
飛行方向に直交する断面を作って、Zを10〜30倍で誇張。
「片側だけ傾いてる?」が見えます。

図9:直交断面(Z誇張例:30倍)
直交断面+Z誇張で、系統的な傾き(ロール/ボアサイト寄りの症状)が強いかを確認する。今回は概ね重なって見え、強い片側傾きが目立たない。
まとめ:初期の数字は敵じゃなくてヒント
今回の学びを一言で言うなら:
初期の12cmは「データが悪い」の前に
「評価条件が混ざって盛られた」可能性が高い。
だからおすすめ手順はこれ。
- 平坦ROIで代表値を作る
- Gridを調整する
- Cut offで外れ値影響をコントロールする
- 断面で最終確認する
結果として、今回は
平均約4cm/RMS約6cmに収束し、見た目の整合感とも一致しました。
この記事は現場の声で育てていきます。気づいた点や追加情報があれば、ぜひ教えてください。
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有限会社アペオ技研 加藤
連絡先:kato.apeo@gmail.com



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