QCの目的は帳票を整えることではなく、 このLASを成果として渡せるかを判断することです。
数値だけで結論を出さず、 差の原因を説明できるかという観点で最終判断の手順をまとめます。
はじめに|QCをやれば安心、とは限らない
点群データのQCというと、
精度管理簿を作り、数値を確認し、提出して終わり。
そんな流れが一般的だと思います。
もちろん、それは間違いではありません。
精度管理簿は必要ですし、重要な成果物です。
ただ、今回の一連の検証を通して、
あらためて強く意識したことがあります。
QCのゴールは帳票ではなく、
「この点群を渡していいか?」という判断だ
この回では、そのそもそも論を整理します。
帳票は派生物。点群が本体。
極端な言い方をすると、
精度管理簿は「説明のための資料」です。
- 評価範囲を変えれば数値は変わる
- 外れ値の扱いで結果は動く
- 条件を詰めれば見た目は整う
帳票は、ある意味後から作れるものです。
一方で、
最終的に次工程へ渡すのは LASデータそのもの。
帳票はいくらでも整えられるが、
点群の中身だけはごまかせない
ここがQCの本質だと思っています。
「12cmズレている?」という違和感
今回の検証は、
コース間QCで「10cm超の差が出た」ことがきっかけでした。
正直、最初は焦りました。
でも、断面や重なりを見ていくと、
見た目としては大きな破綻は感じない。
そこで気づきます。
- 地形の起伏
- グリッド評価の単位
- 外れ値や境界点の混在
これらが重なると、
差分は簡単に盛られて見える。
数値だけで即判断するのは危険だと感じました。
可視化の次に必要なのは「点群そのものの評価」
ヒートマップや断面はとても有効です。
異常の気配を掴むには欠かせません。
ただ、最後に自分が知りたかったのは、
C1とC2の点群は、
実際どれくらいズレているのか
そこで使ったのが、
点ベース(1-NN)による差分評価です。
市販ソフトではなく、自作Pythonを使った理由
ここで少し踏み込んだ話をします。
今回の点ベース評価は、
市販ソフトの既存機能ではなく、
自作のPythonスクリプトで行いました。
理由は単純です。
単純な「近い点のZ差」では、
測量として納得できない場面がある
特に斜面。
斜面中では、
- XYが少しズレただけでも
- 単純なZ差は大きく出てしまう
それが「ズレ」なのか、
それとも「斜面に沿った面としての整合」なのか。
ここを切り分けたかった。
このスクリプトが見ているもの
自作スクリプトでは、
- 周囲の点群から 局所的な平面(斜面)を推定
- その平面の 法線方向に対する残差として差分を評価
という処理を行っています。
つまり、
斜面上でも、
斜面に対してどれだけ浮き沈みしているか
を見る。
さらに、
- 斜面が急すぎる場所
- 平面推定が不安定な点
は、最初から評価対象にしません。
評価できない点を、無理に評価しない
これもQCでは重要な判断だと思っています。
【図】点ベース(1-NN)による C1–C2 高さ差の統計結果(実データ)


この表は、
C1・C2のLASを直接比較して得られた 生の結果です。
要点だけ抜き出すと、
- RMS:約 3.4cm
- 中央値:約 1.7cm
- 95%の点は ±7cm以内
- 系統的な上下ズレは ほぼゼロ
採用率は約3割ですが、
これは「比較に向かない点」を意図的に除外した結果です。
点数を稼ぐために全点を使うより、
信頼できる点だけで評価することを優先しています。
数値が示した結論
この結果から言えることは、シンプルです。
初期QCで大きく見えた差分も、
点群レベルで冷静に評価すると、
実力値は数cmオーダーに収まっている
帳票だけを見ていたら、
この結論には辿り着かなかったと思います。
UAVレーザは「押せば点群が出る道具」ではない
最近は、
UAVレーザを買えば、
点群ができて、すごい
という空気を感じることがあります。
確かに、装置は身近になりました。
でも、
- 点群ができること
- 測量として“成立している”こと
は別です。
自分はレーザ屋ではありません。
レーザを使って測量をしている技術者
だと思っています。
だからこそ、
- 点群を疑い
- 中身を確認し
- 納得できるまで判断する
そのための道具として、
必要なら自分でスクリプトも書きます。
おわりに|QCとは「判断の技術」
QCは、作業ではありません。
このLASを、
他人に渡していいと判断できるか
そのための材料として、
- 可視化を見る
- 数値を見る
- 条件を変えて確かめる
それらを積み重ねて、
最後は 自分でYESと言う。
それがQCだと思っています。
もし、
- 数値と見た目が噛み合わない
- 市販ツールの結果に違和感がある
- この点群、本当に大丈夫か迷う
そんな場面があれば、
一度点群そのものを見直してみる価値はあります。
QCは帳票を作るためではなく、
判断するための技術。
このシリーズが、
誰かの判断の助けになれば幸いです。
この記事は現場の声で育てていきます。気づいた点や追加情報があれば、ぜひ教えてください。
お仕事のご相談、ご依頼も歓迎です。
有限会社アペオ技研 加藤
連絡先:kato.apeo@gmail.com



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