UAVグリーンレーザ測量、屈折点をどこに置くか

MBES

UAVグリーンレーザのQCで本当に難しいのは、水中部の標高が水面設定に強く依存する点です。気中部はGCPで縛れますが、水中部は同じ感覚で精度管理できません。さらに現場によっては、検潮や水位観測ができないことがあります。その場合、断面に見える点群の水面帯を頼りに屈折点を置くことになり、ここが事故の入口になります。

今回は、検潮が取れた海域で、UWCによる手動水面指定、点群からの水位推定、さらにMBES重複での検証まで行い、屈折点の考え方と落とし穴がはっきり見えました。結論は少し怖いです。


重要な前提、本稿の潮位は楕円体高

今回の実測潮位値は、楕円体高です。標高ではありません。点群も楕円体高で取り扱っています。

別途、気中部の精度確認として、点群編集ソフトウェアでジオイド2011(検証現場は測地成果2011)を当てて標高換算し、GCP数点でチェックしたところ概ね2cm程度に収まることを確認しています。つまり、測地基準やGCPの整合は取れている前提で、水面付近の挙動に焦点を当てます。


1. 結論まとめ

実測検潮がある場合

  • 屈折点は検潮値で固定する
  • 点群水面の帯は整合確認に使う(あくまで点群水面点が参考まで)
  • 点群の見た目に水面を寄せない

実測検潮が無い場合

  • 点群から水面推定は可能だが、平均や最頻帯の決め打ちは危険
  • 水面帯が二層化する場合があり、多数派の層が真の水面とは限らない
  • 推定フローをルール化し、採用可否の判定まで含める必要がある

海域では屈折係数を考慮する

  • 可視光(波長約589nm、ナトリウムのD線)における純水の屈折率で、20°Cの条件下での標準値。グリーンレーザは波長が532nmなので波長が短いほど屈折率は大きくなる。
  • 単純に1.333を使うと数cm〜十数cmレベルの系統誤差になり得る
  • 水面の話だけでは終わらず、屈折係数の扱いも成果の整合に直結する

2. UWCの運用、断面で水面位置を指定する

使用してるアミューズワンセルフ社製のUWCは、断面から水面位置を指定して水面下補正を行う運用です。つまり、水面の線は見た目を合わせるための線ではなく、補正計算の境界面そのものです。

この線がずれると、水中部の標高がまとめて崩れます。だからこそ、水面をどう決めたかがQCの中心になります。


3. 屈折点は何か、点が多い高さではなく真の空水境界面

ここが最重要です。屈折補正が参照するのは、レーザ点が一番多い高さではありません。水と空気の境界面が実際にどこにあったかです。

グリーンレーザの水面付近は、波浪や飛沫、水面直下の散乱などで、点が厚い帯になります。水面より上にも点が出ることがあり、水面直下に潜り込んだように見える点が多数派になることもあります。

そのため、断面で見える水面帯の中心に線を置くと、解析作業従事者依存になり、場合によっては真の水面から外れます。


4. UWC断面、水位線は検潮値で固定する

実測検潮がある場合は、UWCの水位線は検潮値で固定します。点群の帯に寄せません。点群の帯は、水位線の妥当性チェックと異常検知に使います。

UWCの操作断面、水色の線が検潮から同期した実測水面高、点群水面は厚い帯として存在する

5. 衝撃の結果、水面らしき点群が二層化していた

今回、8コース分の点群を確認したところ、水面らしき高さ帯が二層化していました。上側の層は実測検潮付近に存在する一方で、下側の層は約30から40cm低い位置に強く出ます。しかも下側の層の方が点数が多いコースがありました。

この構造だと、実測検潮が無ければ、作業者は下側に合わせてしまう可能性が高いです。最頻帯を採る自動推定も同様で、点群を見て素直に合わせるほど、誤った層に吸い込まれます。ここが今回の最大の落とし穴でした。


6. 8コースの水面二層化、実測潮位に近い層と、30から40cm低い層が同時に存在する

8コースの実測潮位と、水面らしき上側ピークと下側ピークの比較、実測潮位は楕円体高

今回の8コースでは、水面らしき点群が二層化していました。上側のピークは実測潮位の近傍に存在し、差は数cmに収まります。一方で下側のピークは、実測潮位より30から40cm低い位置に強く現れます。しかもコースによっては、この下側の層が点数的に多数派になります。

この状態で実測検潮が無いと、作業者が断面の厚い帯の中心に水面線を置いてしまい、結果として下側ピークに合わせる危険が高まります。自動推定でも同様で、最頻帯や中央値だけに依存すると、下側ピークを代表水位として採用してしまいます。

上の表は、その危険を数値で示したものです。上側ピークは実測潮位に対して概ね±数cmで推移しますが、下側ピークは一貫して負側に大きく外れます。水面点群は真の空水境界面を一点で示していない、という前提を知らないと、ここで水面設定を誤ります。

注記

  • 実測潮位,点群は楕円体高
  • 上側ピークは実測潮位近傍に存在
  • 下側ピークは水面直下成分や分類混入の可能性があり、境界面の決定に使用しない

7. 1コースの水面点群分布、実測潮位と大きく乖離する例

二層化の怖さを伝えるには、1本のコースで十分です。水面らしき点群が、実測潮位の近傍にも存在する一方で、下側に厚い層ができ、見た目や最頻帯が下側に寄ります。

代表1コース、水面付近点群のZ分布、上側に実測潮位近傍の層があるが、下側に厚い層が生じる

ここで言いたいのは、実測があるから上側が正しい、という主張だけではありません。実測が無い現場では、点群の見た目だけで水面を決めると事故り得る、という点です。


8. 検潮が無い現場への備え、点群から水位を推定するPythonを作った

過酷な現場では検潮ができないことがあります。そこで、単コースが数分で終わる前提を利用し、コース単位で水位がほぼ一定とみなして、水面エリア点群から代表水位を推定するPythonを作成しました。狙いは、作業者依存を減らすこと、採用資料として説明可能な指標を出すことです。

ただし今回の二層化により、推定は一発で決め打ちしてはいけないと分かりました。水面候補は複数出る前提で、候補を並べ、採用可否の判定を入れる必要があります。

推定フローは次の考え方に寄せます。候補ピークを複数出す、上側候補が面として成立しているかを評価する、条件を満たさない場合は推定を確定値として扱わない。つまり推定値を出すだけでなく、採用できるかどうかを判定するところまでがQCです。


9. もう一つの核心、屈折係数が整合を支配する場合がある

今回の朗報はここです。同一エリアでMBESも実施し、重複地形で比較できました。その結果、UWC側の屈折係数を1.342に設定して処理したグリーンレーザ成果が、MBESの重複断面とピタリ整合しました。

ここで誤解しないために書き方を明確にします。1.342はUWCで用いた屈折係数です。重複地形で一致したことで、UWCに設定した1.342がこの現場条件では妥当だった、という結論です。

水面設定だけでは説明できないズレが残る場合、屈折係数が効いている可能性があります。海域で1.333固定にせざるを得ない場面は多いですが、今回のように重複観測があるなら、係数同定が可能になります。


10 . グリーンレーザとMBESの整合断面、係数1.342で一致

重複断面、UWCで屈折係数1.342を採用したグリーンレーザ成果がMBESと整合した例

11 .説明できる実務フロー

11.1 検潮がある場合

1 計測時刻と検潮時刻を同期し、検潮値を水面指定値として固定
2 点群水面の帯は整合確認に使用
3 点群中心に水面を寄せず、時刻同期や基準面混在の点検に使う
4 係数は可能なら現地条件に合わせる、無理なら感度や根拠を明記
5 可能なら重複観測で独立検証する

11.2 検潮が無い場合

1 点群から水面候補を推定するが、単一値の決め打ちはしない
2 二層化を前提に複数候補を出す
3 面性評価と連続性チェックで採用可否を判定する
4 採用できない区間は適用範囲外として明示する
5 内部整合指標を添付する、重複域差、水際連続性、水面帯の厚み、欠測率など


12 .まとめ、屈折点は見た目で置かない、二層化と係数の両方に備える

点群に見える水面帯は、真の空水境界面を一点で示していません。水面らしき帯が二層化し、下側が多数派になる場合があり、実測検潮が無いと下側に合わせてしまう危険が高いです。

海域では屈折係数が成果に効く場合があり、今回はUWC係数1.342でMBESと整合しました。検潮が無い現場では、推定手順をルール化し、採用可否の判定まで含める必要があります。

屈折点は、成果の再現性と説明責任のど真ん中です。今回の事例は、検潮の価値、点群水面の落とし穴、係数の効き方を一度に示せた重要な記録になりました。

この記事は現場の声で育てていきます。気づいた点や追加情報があれば、ぜひ教えてください。
お仕事のご相談、ご依頼も歓迎です。

株式会社 GEOQ(ジオキュー) 加藤
連絡先:kato.apeo@gmail.com

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